足掛け5年(実質4年)続いた「おはなしえん」ですが、とうとう最終回を迎えました。
観に来ていただいた皆様、差し入れなどいろいろと応援してくれた皆様、本当にありがとうございました。
2015年の7月から始まった「おはなしえん」。天王寺動物園に来るのは、僕個人の経験で言えば幼稚園の遠足のとき以来、ほぼ40年ぶりの来園でした。
このイベントの中心となっていたのが朗読「ペンギンは空を目指す」です。このお話が全部で10話ありました。これが終了したので、とりあえずの最終回だったわけです。
「ペンギンは空をめざす」は初回からいい感じで始まりました。子供向けの朗読と言いながら、内容は大人向けだったと思います。また、未来に僕らの考えとそれほど変わらない想いを持つであろう、数少ない子供たちのためのものです。
第1回目、フンボルトペンギンの、でも泳ぎの得意でないテンちゃんの紹介のところで使うオープニングの曲を、オシャレなものにしたい、南国を思わせるゆったりした感じをどこかに持ちつつ、心の中にワクワクする気持ちを持っているもの、と考えていました。
それで、若い時分によく聞いていた大瀧詠一さんの「君は天然色」にしました。80年代に流行った曲ですね。ちょっと難しかったけど出来ました。
でも、YouTubeに出すビデオを作る段階で、人の曲は極力避けましょう、ということになりました。
でも昔の曲だったら大丈夫やろう、1920年代戦前やったら、と思って「Fishin' Blues」を持ってきました。これは1920年代にはテキサスのブルースマン、ヘンリー・トーマスが歌い、1970年代にタジ・マハールが歌ったカントリーブルースです。いい選択だったと思っています。第1話を他でやるときにはこの曲で落ち着いています。
飼われていて緑のネットの中にいるテンちゃんは、サギのハルカと出会います。そこで「自由」というものを教えられて、というか飼われていて自由がないことをバカにされて「ペンギンは飛べるわ!」と言ってしまいます。それで、飛ぶための冒険、通天閣を目指す旅が始まります。テンちゃんはペンギンの部屋をハルカの助けを得て出ていきます。
天王寺動物園を出て行くまで、王様ペンギン、タンチョウ、フラミンゴなどいろんな動物(だいたい鳥)に出会って助けられます。
とうとう動物園を出たテンちゃんは、ネズミの助けを借りて通天閣に登っったけど、さらに高い建物「ハルカス」を見つけます。通天閣を降りたテンちゃんは、同じく空を飛ぶために動物園を出たペンギンたちに出会い、一緒にハルカスを目指します。
もう、人間に捕まってしまうギリギリのところで、ハルカの率いるサギたちの助けで、空を飛びます。飛びながら「もういいわ」と思い、ハルカに動物園まで送ってもらいます。
ハルカ「テンは飛んだね」
テン「ハルカも飛んだね」
ハルカ「僕はいつも飛んでるよ」
テン「私はたまに飛ぶのよ」
ハルカ「そうだね」
このシーンがグッときますね。種が違うのにお互いを認め合っていることがよくわかります。人間もこんな風にありたい、と思います。
帰ってから両親に怒られますが、前とは違って、不得意だった泳ぎにでかけます。
テンちゃんはちょっと成長しました。いろんなことを知り、その上で自分のことを、また他人のことを、肯定するようになっています。
最終話の台本をもらったのは1月の終わり頃、初めて読んだときには泣きましたね。一見そんなに泣くところはないようなのですが、わかる人には泣けるのです。
自分のことに置き変えてみて、この心の変化をわかる人はなかなか出会えない貴重な物語です。劇的な驚きにせず、最後がこんなに静かなのっていいですね。
一番最後の曲は第1話と同じと決めていました。「Fishin' Blues」です。
本当に最後の5月12日、バナナンボの相方のあぼちゃんが「最後の曲が早く終わりすぎてない?」っていってくれて、もう1コーラス追加しました。おかげで泣かないようにがまんしなければいけませんでした。あぼちゃん、ありがとう。
「ペンギンは空をめざす」って、なんか自分の物語のような気がしてるのです。「おはなしえん」を一緒にやった劇団超人予備校の人たちの物語のような気もするし、この物語を書いた魔人ハンターミツルギさんのことのようにも思うし、すべての世間的にうまくいっていない人への励ましの物語であったようにも思うのです。
「おはなしえん」に足掛け5年(実質4年)関われたことを、本当に嬉しく思っています。
0 件のコメント:
コメントを投稿