千秋楽を終えましたので、やっと「おやすみラムチョップ!!!!!」について書けますな。
劇団超人予備校「おやすみラムチョップ!!!!!」、今回の本公演はなんと4回も観た!
いつも以上におかしなことになっている。でも自分と無縁の物語とは思えないところが超人予備校のすごいところ。
3つの物語が進行していく。
1つ目は「眠れない男」。夜、眠れないでいると、羊が隣にいる!それも暑苦しい羊が。
羊は男の眠れないのを治そうと、上司の羊やアラブの言い伝えなどを駆使して、いろいろなアホなことを仕掛けていく。ベタな笑いはここに集約されている。
2つ目は「日本FBI捜査官」。機密文書がなくなっていた。それも食べられた跡があり、人間の唾液が検出された。精神科医でありヤギ研究の第一人者で、今は精神病院に閉じ込められている「管(くだ)」に捜査の協力を依頼する。
3つ目は「普通の夫婦」。一見静かに暮らしているが、内心ではお互いの気に入らないところに怒っている。心の声が聞こえる。が、何回目かのシーンでは「心のマイク」が立てられていて、表面的な会話のあと、いちいち心の声を言いに行ったりして笑わせる。
この夫婦の近所に住んでいる少し変わった美人の奥さん、八木沼さんが絡んでくる。なんと彼女はヤギの遺伝子を入れられたヤギ人間だった!八木沼さんが鍵になってそれぞれの物語を結びつけていく。
超人予備校の芝居には必ずダンスが入っていて、今回、八木沼さんがヤギに目覚めていくダンスが挿入されていた。これが素晴らしかった。コンテンポラリーダンスの要素もあり、新境地である。
「日本FBI捜査官」の途中で登場する変な人達は、自分から人間以外の動物になろうとしていて、それぞれの動物の特徴を備えたヤギ人間、犬人間、ムフロン人間で(ダブルキャストで耳長ヤギ人間!)ある。それら動物人間の力を借りて、容疑者に近づいてゆく。
自分からなったヤギ人間、犬人間、ムフロン人間(耳長ヤギ人間)に対して、容疑者である八木沼さんは戦士として人間が開発した、過酷な環境にも耐えられるヤギ人間。最後は人間として生きていくことを決意する。
人間は苦しいことをなくそうと努めてきた。隣国から攻め込まれないために武器を作り、食料がなくならないように遺伝子組み換えを行った。それにもかかわらず現実の世界ではすべて悪い方向に進んでいるように思える。しかし、この芝居の中では、ちょっとずつ間違って、おかしな方向に行ってしまった人達が描かれている。
この芝居のハイライトは、ヤギ人間である八木沼さんがFBIに捕まるときの人間の言葉だ。
FBI捜査官が「言うこと言ったら、隙をみてさっさと逃げなさい。」と伝えるところ。その捜査官は人間でなくなった動物人間や、もともと半分人間ではないことを認めて同じ地球の住人として受け入れていく考えになっている。
もう1つ、八木沼さんがFBIに連行されるときに、普通の夫婦の妻の一言「手荒なことはしないでください。友達なんで。」っていうやさしさ。人間の可能性はまだある。
一方、眠れない男の眠れない理由がわかり、「忘れろ草」が一面に生えている草原でそれを食べる。ふと気づくと、別れた彼女や、ヤギ人間や、夫婦や、八木沼さんなど、忘れるために草を食べている。みんな忘れたいことが多いのだ。ここで3つの物語が一瞬交わる。これは眠れない男の夢の中なのかもしれない。ちょっとやりきれなくなるシーンだが、ここから次が始まるかも、という前向きな感情も同時に見ているこちらに生まれる。
一方、眠れない男の眠れない理由がわかり、「忘れろ草」が一面に生えている草原でそれを食べる。ふと気づくと、別れた彼女や、ヤギ人間や、夫婦や、八木沼さんなど、忘れるために草を食べている。みんな忘れたいことが多いのだ。ここで3つの物語が一瞬交わる。これは眠れない男の夢の中なのかもしれない。ちょっとやりきれなくなるシーンだが、ここから次が始まるかも、という前向きな感情も同時に見ているこちらに生まれる。
最後のシーンは、八木沼さん逮捕のシーンを見た妻が雨の中、夫を迎えに行き、普通の会話ができるようになる。夫の「ちょっといいことがあった話」で笑っておしまい。やっぱり普通が一番いい。
全体を通じて笑えるように作られているが、変なところで泣いてしまう。ほんの些細なことで。
それぞれの物語は誰にも自分自身の中にあるような「痛い」部分を含んでいる。何かのきっかけがあると崩壊しそうなギリギリのバランスの中で生きている。そこに少しでも触れると泣かされてしまう。
また、謎は謎のまま残されている。
八木沼さんはなぜ機密文書を食べたのか?(途中でその理由、ヤギの本能が少し語られているが)
八木沼さんは逃げた後どうなったのか?
眠れない男は眠れるようになったのか?
ヤギ人間、犬人間、ムフロン人間などが居る今後の地球って?
そこは観た人が自分で作っていくところである。
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