2016年5月23日月曜日

TOKYO 0円ハウス0円生活

数年前、本屋に「0円ハウス」という写真集が売っていたのを知っていた。なんとなく気になっていたのだが、路上生活者が実際生活している段ボールハウスを写真に撮ったものだろう、なんて悪趣味な、とかなんとか思っていたのだろう。当時は「面白そう」という好奇心はあるにはあったのだが、なんか、家の持ち主に悪いな、なんて勝手に思って読んでいなかった。

で、この前、坂口恭平著「TOKYO 0円ハウス0円生活」という文庫本を見つけた。
「ああ、あの時の作者やな」と思ったが、「0円ハウス、0円生活」というのにやっぱり惹かれた。
買って読んでみて、頭を殴られた感じがした。読み終えた今になっては、昔に僕が心配したことを恥ずかしく思う。



この本に満ち溢れているのは、「路上生活をしなければならない辛さ」ではなくて、「自分の家を持っている豊かさ」である。言い換えれば「自分で判断して自分で選んだ生活の面白さ」を書いてある本なのである。

著者の坂口氏は肩書きを「建築家」「作家」「音楽家」などとしているが、自分でも決められないのだそうだ。
この本は「建築家」としての視点から(ちょっと違うかもしれないけれども)、書かれているようだ。建築家といっても家を設計することではなくて、あるもので構成して、家、快適な空間を作ることを考えている。これは面白い視点である。というか、子供のころ、基地を作るとかいって、誰も知らない場所を作ったことと考え方は同じなのだ。
この本の中で、隅田川沿いに住んでいる鈴木さんという人の生活が紹介される。ゴミを拾ってそれを有効活用することで生活していることや、空き缶拾いなどの仕事、警察や役所または周りの住民とも仲良くしていることも明かされる。人間関係もしっかりしているのだ。僕が会社員時代に出会った他部所の課長なんかよりしっかりしている。印象は、個人営業の商店の社長だ。

この本を読んで確信した。会社に入り、少ない給料をもらって、常識にちょっとでも外れる人を迫害して生きる生き方は間違っている。そうではない生き方が可能なのだ、と。

一億総活躍社会など糞食らえだ。

古楽器講習会などいろいろ

ここ数日忙しかった。
忙しいといってももちろん仕事ではないですよ。遊んでいるのであるが、まあ楽しかったね。

まず20日金曜日は、劇団The Stone Ageの「バンドやろうぜ2」。期待していっただけあって、かなり面白い。金八先生を彷彿とさせる(っていうか誰でもそう思う)長髪のカツラをみんな被って登場。初めはネタ振り的なので、あんまり笑うところなかったけど、後半、アホアホパワー全開で笑わせてくれた。去年の本公演を観た時はひたすら泣かされたのであるが、こういう笑いに寄った方が好きかな。


21日土曜日は、お昼に、本読みの時間「物語の、うつわ(二)」。今年3月に「本読みの遠足」でご一緒した、甲斐祐子さん主宰の朗読公演(本番は19時30分ですが、お昼に「ライブ」と称して短時間の公演がありました)。関西小劇場界からの優秀な俳優(この時は女優)とナレーターが本を読み聞かせてくれる。丁寧な本のセレクトと、安定の上手さ。女の一生を年齢ごとに追った内容の絶妙の構成感。いつもいつも堪能しています。


で、夕方からは劇団超人予備校の「ラボライブ」の稽古にお邪魔。22日がラボライブ「ラムサル」だったのですが、本番当日、行けないので、強引に稽古を見せてもらいました。ラボライブは、台本を作らず、劇団員が去年と今年の干支のネタを集め、構成して、一つのショートショートのお芝居にするんです。これが本公演や他の公演とは対照的な変な盛り上がりを見せるのです。
去年の干支、羊編は、去年見たネタと新作が混ぜてある。どっちも面白い。さて、今年の猿編。これが、出来は荒削りやけど大爆笑ネタ満載でした。特に山名さんのパーマン2号のネタは腹抱えて笑ったよ。


で、22日日曜日は大津びわ湖ホールの練習室にて「古楽講習会」。バロックギターが専門の竹内太郎氏の指導を受ける。
講習生は4人と少なめだったけど、みんなレヴェルの高い演奏と内容。聴きごたえあったなー。
古楽にはまだ足を踏み入れていないクラシックギターの人もいい音出してた。クラシックと古楽ってやってることが違うんですよね。是非こっちの世界に来て欲しいな。

ゲストには前も参加してくれたフルート奏者のHSBさん。
最後のセッションのコーナーでは、ボワモルティエのソナタの1楽章と4楽章をHSBさんのフルートに通奏低音で合わせました。

通奏低音って難しいものだと昔は思ってたけど、案外できるもんやな、と最近は思いますね。なんでも諦めず続けたらいいことあるんですな。


2016年5月11日水曜日

言葉と無意識

丸山圭三郎を飲み屋で知り合った友人から「読んだほうがいいよ」と勧められた。
まあ飲みの間やからな、と軽く受け流していた。と書きたいところやけど勧められて次の日には丸山圭三郎の本を買っていた。

初めに読んだのは「ソシュールを読む」。


ちょっと前にソシュールの「一般言語学講義」を買って読んでいた。でも言語学っていうのもよくわからなかったし、本もあんまり面白くなかったので半分ほど読んだところで古本屋に売った。

そういう前提があっての「ソシュールを読む」やったんやけど、これが面白かった。
言語ってどういうものなん?っていう疑問から出発してて、ラング、ランガージュ、パロール、って分けられる、みたいな話から始まるけど、これが文化を持ったから(言語を持ったから)、人間は他の動物とは違った繁栄と大きな問題を抱えている、という考えに至っている。ソシュールは多分、そういう批判を持っていただろうと。

これだけでも十分面白かったんですが、面白い時はさらに畳み掛けたら、とんでもない方向に導いてくれる(もちろん、面白いほうへ!)ので、買ってみたのが「言葉と無意識」。


これは読み応えありますよ。「儲ける人は靴下を洗わない」(←フィクションです)みたいな本を大量生産しているという新書ですが(笑)。
新書ってバカにできないですね。いい本もいっぱいあります。

今の文化の発生状況から、「お金」「エロ」「死」にまで話は及びます。
言葉は実態ではなく関係性(差異)でしかない、というソシュールの考えに基づいて、言語とは何かを掘り下げていきます。
お金とエロを言葉の関係性から説明したところは面白いですよ。特に「エロ」。関係性でしかないからどんな嗜好も出てくる、など。

19世紀終わり頃から西洋で出てきた考え方は、インドや中国で遥か昔に持っていた哲学(中観哲学、唯識派)などの関連が指摘され、言葉を持ったがために起こった精神的な病気のことにまで言及しています。

無意識とは言語が出てきた為に現れたもの、という考えも面白く、またいろいろと納得のできるところもあるのです。

精神科や心療内科の医者はどんな薬を出したらいいかを勉強するより、こういうことを勉強しといてほしいですね。
患者の快癒より、薬屋と自分たちの儲けの為なんですかね。そんなことやってると自分もいずれ。。。まあ、現状のとおりです。

2016年5月10日火曜日

ミックス

オフコースの「愛を止めないで」がドラマの主題歌になるそうである。それに合わせて当時のシングルがCDとして再発されるとのこと。ジャケットも全く同じである。



僕が意識的に音楽を聴き始めたとき、そう、初めて買ったLPがオフコースのベスト盤「SELECTION 1978-81」だった。A面3曲目に収録されていて、当時よく聴いた。

1つだけ文句を言いたいことがある。
この曲のミックスが良くないのである。そのベスト盤に収められているのは、多分シングル盤のミックスのままだと思う。
歌い出しの小田和正のピアノと歌だけの部分があって、だんだん他の楽器が加わっていって、サビの部分で最高潮になる。でも最高潮に近づくにつれて、音量が明らかに下がっている。楽器が増えて全体の音量が上がりすぎると音が歪むので、こういう手法を取ることがある、と誰かから聞いた。
これ、一番盛り上がるとこでがっかりさせたらダメでしょう。
「あ〜〜残念!」と超人予備校・尾松さん風に言ってみても、録音は変わらない。

しかし!で、ある。
なんと、このシングル盤と同時期に出たアルバム「Three and Two」は、編曲は同じだけど、ミックスが違うのである。
これは、弾き語りから始まって、楽器が増えていって、サビの部分では最高潮の気分にさせてくれます。他の曲も演奏が前に出がちでちょっと荒削り風に聴こえなくもないけど、こっちの方が満足度は高いね。

なんで、こっちのミックスをシングルにしなかったのだろう?
未だに、ラジオで残念な感じを味わっている。
DJの皆さん、そこなんとかお願いしますよ。ちゃんとわかってね。