2017年1月23日月曜日

ファクシミリ

去年からイギリスのリュート曲に夢中。ちょうどシェイクスピアが生きてた頃のリュート曲。

というのも楽譜あさりが面白い。クラシックギターをやっていたときはあんまり意識しなかったけど、オリジナル楽譜ってのがあるんですね。それは作曲者が初めに出版した楽譜だとか、作曲者が書いた自筆譜とか。あとの時代に誰かが編集していない版がファクシミリで出版されたりしています。
曲を弾く時は第一次資料であるオリジナル楽譜をみときなさいよ、ってことが古楽界では一般的。それを知らないと恥をかくことになるかもよ。ぶるぶる。

弾きたい曲があって、その楽譜を持ってないときにネットで探す。根気が要りますが、出てきますね。

僕が学生時代に習っていたギターの先生は、ヴァイスの曲を弾きたくて、ヨーロッパの図書館(どこか忘れた)に連絡をとったらマイクロフィルムで送ってくれたそうです。図書館は誰にでも門戸を開いていると、先生は感激してましたよ。(それからが大変だった、っていつも言ってました。)
それが今、図書館が持っている蔵書をデータ化(PDFなど)しているのが、簡単に手に入るようになっているのですよ!

僕がやってるルネサンスリュートの世界では、最初の出版譜とともに、作曲者が弟子に教えた時に弟子が持っていた自筆譜(作曲者ではないみたい)もある。そんなものまでデータで手に入る。いい時代ですね。

で、ネットをいろいろ調べたり、友達に教えてもらったりして手に入れました。
「ML Lute Book」と「Margaret Board Lute Book」です。どちらもルネサンスリュートにとっては大事な写本です。



ML Lute Bookより
「John Come Kiss Me Now/作者不詳」


 Margaret Board Lute Bookより
「Solus cum sola/ジョン・ダウランド」

Margaret Board Lute Bookより
「Lachrime/ジョン・ダウランド」






手に入れたのはいいのですが、有名な写本ってことだけしか僕にはわかりません。わからないのに講習会に持っていって弾くなよ、って怒られそうですが。。。
どちらも手で書いたリュートのタブタチュア譜です。もう見ているだけでよだれが。。。
Margaret Board Lute Bookには、なんとダウランド本人の筆跡と思われる箇所もあるそうです。

この写本に関わった人物の名前は伝わっています。
John SturtさんとMargaret Boardさん。
Johnさんは作曲家かな?Margaret Board Lute Bookに確か名前が載っている。Margaretさんはダウランドの弟子???

あと「The Folger 'Dowland' Manuscript」も欲しいんだよなー。なんとなくホームページは見つかったのですが、そこから探す方法がわからない。
やっぱり出版されてるのを買おうかなー。英国リュート協会から出てるんよね、たしか。

2017年1月13日金曜日

マドリガーレ

なんかとっつきにくそうなイメージのあるマドリガーレ。中世のじゃなくて、後期ルネサンス期に発達した基本的に合唱なんですが、割とややこしい感じ。でも数年前から積極的に聴いています。


前にもブログで書いた、ラ・コンパーニャ・デル・マドリガーレの演奏するマレンツィオの5声のマドリガーレ第1集を買ったあたりから、割といいなと思い始めました。
(写真左 マドリガーレ第1集/マレンツィオ)

それまでも買ってなかったことはないのですが、モンテヴェルディのマドリガーレ集ぐらいかな。コンチェルト・イタリアーノの演奏のものから、途中からラ・ヴェネクシアーナのやつを順番に揃えるでもなく、適当に選んで買ってた。2、4、5、6、8集とルーリーの抜粋版を持ってる。第8集(1638年出版)ぐらいになると合唱部分が少なくなってソロの部分がやたら長かったりするし、泣かせのメロディだったり、いろいろと変わってきたのがわかる。
今、飛ぶ鳥も落とす勢いの人気グループ、ラ・ヴェネクシアーナはもともとコンチェルト・イタリアーノにいた人達だったそうな。リーダーのアレッサンドリーニと喧嘩したのか暖簾分けかは知らないけど、クラウディオ・カヴィーナを中心にした合唱中心のグループとして成功している。
(写真右 マドリガーレ第8集/モンテヴェルディ)







で、今回買ったのは次の2枚。


「マドリガーレ第3集」
(ジェズアルド)
ラ・コンパーニャ・デル・マドリガーレ


「マドリガーレ第5集」
(マレンツィオ)
ラ・コンパーニャ・デル・マドリガーレ














どれもスペインのグロッサというレーベルから出ている。
昔、リュートを弾き始めた頃(1996年ぐらい)にホセ・ミゲル・モレーノのリュートやギターやヴィウエラのディスクを買いあさっていたな。もう今はあんまり聴かないけど。それもこのグロッサレーベル。このレーベル、結構気に入ってます。

ラ・コンパーニャ・デル・マドリガーレは、コンチェルト・イタリアーノとラ・ヴェネクシアーナで活躍した精鋭メンバーとのこと。2008年から活動している。ほんとに最近のグループ。

ジェズアルドはイタリアの貴族で、嫁さんの浮気現場に乗り込んで二人とも殺したという事件で有名。もともと鬱気質で暗い感じの人だったという。そういう人だからなのか、音楽は美しい。輝かしいハーモニーも次の瞬間には消され暗い闇に落ち込んでしまう、でもそれゆえに輝きが美しく感じられる。ダウランドもそんな感じがするけど、ちょっと印象が違うかな。

一方、マレンツィオは華やか。後期ルネサンスの最後の輝きか。当時は非常に人気のあった作曲家だったらしい。これもジェズアルドに負けず綺麗な音楽。
第1集に入っている「Liquid Pearl」という曲、テルツィがリュートタブラチュアにおこしたものを持ってるけどまったく歯が立たない。一度弾いてみたいけど2重奏やしな。誰かやらんかな。

マレンツィオが亡くなって11年後の1610年にはモンテヴェルディのヴェスプロが出版される。もうバロック初期の時代。
こう見ると、昔の音楽の流行りも今と同じように速かったみたい。

2017年1月10日火曜日

古楽講習会 in 神戸

年始にはおなじみ、太郎さんの古楽講習会に行ってきました。今回は「舞曲」を中心に。
会場は珍しく神戸。神戸といっても神戸駅よりさらに西に行った兵庫駅からすぐ近くの兵庫勤労市民センター。
昔、この近所に住んでいた。まわりに居酒屋が多く、柳原えびす神社も近くにある。9日は宵えびすということで、人でごった返していましたよ。

今回はダンス講師として谷田さんを迎えて、ルネサンスダンスのステップを幾つか教えて貰った。踊るのは苦手だが、やってみると感覚がわかるね。
普通は男女ペアでやることが多く、お互いをアピールしあったりする。そのときに、この人は相手を気遣える人や、とか、こいつはそっけないやつや、みたいに相手がどんな人なのかが分かったという。

谷田さんはピアノやチェンバロも弾いていて、音楽とダンスの両方に通じているとの事。太郎先生のいう事をさらりとやって見せてくれる。
音楽の個人レッスンでは講習生の舞曲にダンスを即興でつけてくれるので、どのように音楽をとらえて踊るのかが目で見てわかった。
何がわかったのかはっきりいえないけど、ダンスを見る前と見た後で楽器の弾き方が変わるぐらい、いろんな事がわかってくる。
もっと大きなフレーズ単位で弾いてみると案外まとまったり、弾いているこちらも乗せられてしまったり。

今のダンスのレッスンはCDやテープをかけてやるので、同じぐらいのテンポにしないと踊れない人もいるみたい。でも昔はCDなんてないから生身のミュージシャンを呼んできて踊るから、お互いがうまくできるようにテンポやノリなどを瞬時に調整してたという。これってコミュニケーションっていいますね。
今回のテーマは舞曲ですが、裏に隠されている大事なテーマであったと思います。

あと、楽器のセッションの時間には大物ゲストが2人も来ていました。
クラシックギターの増井さん、古典フルートの長谷場さん。増井さんはなんとパノルモ持参。(パノルモというのは19世紀ギターの名器)
打ち上げでいい話をしてくれました。
・いいギター(当然値段は高い)を持つのはいいことだ
・自分のレベルより上の楽器を持つとよい
・いいギターは自分の不調のときに助けてくれる
・人から教えられないものを楽器から教わる
など。
こちらは楽器とのコミュニケーションのお話でした。

いつものことながら講習会やその後の宴会では、いろんなことを知ることができれば嬉しいし、でも自分が何も知らないことも同時にわかってくるので、謙虚でいる事も忘れないようにしようと思うのです。

楽しい1日でした。(写真撮るの忘れた。。。)

2017年1月8日日曜日

オケゲム

あけましておめでとうございまする。
あ、もう年が明けてだいぶ経つのですね。ようやっと重い腰を上げたところです。

といっても年始からよく飲みに行ってます。
3日は木津市場の「はっとりあん」で宴会。5日は去年に「物語の、うつわ」に出た人の宴会、7日は劇団超人予備校の「あしたは全力モンキー」の精算会&新年会。
もう、飲みすぎるわー。といいながら、今年はすでに2日も休肝日があったのですよ。飲みすぎた次の日は飲まないってことなんですよね。

久しぶりにCDを買いに行ってきました。
で、ゲットしたものは、
ロンドン中世アンサンブル「オケゲム世俗音楽全集」
(ディレクター:ピーター・デイヴィス/ティモシー・デイヴィス)

1981年録音。
このグループ、だいぶ前にデュファイの世俗音楽全集(5枚組)を買って、非常に良かったのです。

オケゲムはデュファイより10年後輩。どちらも15世紀の初期ルネサンスを代表する作曲家。15世紀から16世紀にかけてのルネサンス音楽は、まだ調性らしきものも出て来ないし、僕らがよく聴いているダウランドなどの時代の音楽とは違う。
ダウランド時代の音楽は楽譜を見るとなんとなく読めるが、この時代のは楽譜も読みにくい。というか、ちょっと勉強しないと読めないところが多い。
聴いた感じでは違和感はないけど、音楽的な習慣は全然違うんですね。

しかし、この「ロンドン中世アンサンブル」というグループ、ディレクターのピーター・デイヴィス/ティモシー・デイヴィス兄弟って知らんかったんやけど、今どうしてるのかな?全然名前を見ない。メンバーには今活躍している人の名前を見かけるのに。
過去の人になってしまっているのか?
録音を聴くかぎりでは、もっと聴きたい、と思わせるものばかりなのに。

オケゲムといえば、昔よく聴いた「レクイエム」(アンサンブル・オルガヌム)が有名盤ですね。

アンサンブル・オルガヌムはマルセル・ペレス率いるフランスの合唱グループ。誰でも知っているものには興味はないらしく、10世紀より前の聖歌をほじくり出して来て録音している。基本、男性歌手だけです。高い声部に少年を起用している。
このグループで有名なのはこの盤と、アンサンブル・クレマンジャヌカンと一緒に録音したジョスカンのミサ曲。キワモノの2グループが録音したことで有名です。
ロンドン中世アンサンブルと比べると個性的すぎますが、こちらも好きですね。