2016年1月30日土曜日

新春BIG対談

さて、今年も「新春BIG対談」としまして、アンサンブル・プリンチピ・ヴェネツィアーニ主宰の笠原雅仁氏にお越しいただいて、あんなこと、こんなこと、お話ししました。今年はもうやめようかと思っていたのですが、なんとか3年続きましたね。このブログで唯一古楽らしいゲストです。
今年はプリンチピ結成10周年ということで、関西古楽界も盛り上がるんじゃないでしょうか。
と言いましても、あんまり(というか一切)古楽の話をしていませんね。古楽器奏者は普段、どんなことに興味があるのか。それではお楽しみください。

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(小松 以下小)あけましておめでとうございます。
(笠原 以下笠)おめでとうございます。
(小)笠原さん痩せましたね。お腹がBIGじゃないじゃないですか(笑)
(笠)そうなんですよ。割とお酒を控えてまして、痩せました。
(小)羨ましいです。
(笠)健康には気をつけていかないといけませんからね。
(小)さて、今年も新春BIG対談を行います。3年目ですね。よろしくお願いします。
(笠)よろしくお願いします。

⚫︎去年は
(小)新年早々、こんな話もどうかと思いますが2015年はいろんな人が亡くなりましたね。有名どころではデビット・ボウイが。びっくりしました。新譜が出るという事を知っていたので、訃報を聞いたときには「???どういう事???」って感じでした。
(小)僕は積極的にデビット・ボウイは聴いていないんですが、この前の新譜「★(ブラックスター)」は結構良いですよ。
(笠)買ったのですか?
(小)いいえ。今、YouTubeで全曲聴けます。表題曲は10分ぐらいあって、ラジオでかかってた時「これ誰?」って思って。
(笠)さすがですね。そういえばデビット・ボウイの出演していた「戦場のメリークリスマス」、テレビでやってましたね。
(小)そうですか。僕は中学生だったかな。学校から観に行きました。
(笠)学校からですか?
(小)そうなんです。珍しいでしょう。半分ホモ映画なんですが、そういうところにはおおらかだったのですかね。荒れていた学校だったのに。
(笠)大島渚監督でしたよね?
(小)そうですそうです。
(笠)大島渚といえば、野坂昭如も去年亡くなりましたね。
(小)そうでした。
(笠)「マリリンモンローノーリターン」をこの前カラオケで歌おうと思ったんですが入っていないんですよ。それで隣の客となぜかダムド(イギリスのパンクロックグループ。ロンドン3大パンクの1つ。)のニューローズを歌ってたのがこの前フェイスブックに乗せられました。
(小)あ、あの写真、そうだったのですか。
(笠)最近、往年のパンクロッカーたちが俳優や物書きになって出ているのを見てびっくりしました。イヌの町田町蔵、スターリンやばちかぶりのボーカルなどなど。。。いい感じのおっさんになってますね。私も憧れます!
(小)でも野坂昭如はカッコよかったですね。
(笠)そうですね。元祖プレイボーイですから。野坂さんは現状を憂いていたけど、面白いことはやれ、という人ですから尊敬できます。
(小)戦後に活躍した人はちょっと一筋縄ではいかない人ばかりです。僕の好きな水木しげる氏も去年亡くなりました。昔、神戸に住んでいたとき、近くに水木通りという道があったんですよ。近所に水木しげるさんが住んでいたことがあったそうです。
(笠)そんな縁があったんですね。そういえばシーナ&ロケッツのシーナも去年でしたっけ?
(小)あ、そうですね。去年2月かな。
(笠)この前のプリンチピ福岡公演のときにお墓参り行きたかったんですが時間とれなくて。。。
(小)子供の時にスターだった人やテレビでよく見かけた人が亡くなっていくのは寂しいですね。
(笠)ほんと、そう思います。

⚫︎「生」の肯定と価値変換
(小)戦争を体験した人達で、面白い人に共通しているのは、現状を肯定する力があることですね。一回「死」の近くまで行ってるので、「生」に対してものすごく肯定する。それも「死」を否定するのではないやりかたで。それに楽しくない事は一切やらないですね。
(笠)ほんとそうです。
(小)僕はサラリーマンを辞めてみて、初めて見えてきた事があります。サラリーマン時代は人間の価値はお金で支払われると思っていました。完全にそう思っていたわけではありませんが、世間はそういうものだろうと思っていました。お金に換算して評価されると。そう思っていると自分の価値はゼロに近づいていきます。ニヒリズム。でも、人間の評価なんてそんな簡単に決まるものではないんです。自分で決めればいいんですよね。ちょっとした価値変換。自分で決めると、結構、僕、イケてるなーと(笑)
ほとんどのサラリーマンがなんとなく思っていると思いますが、自分が上に立つとそれは逆になって人を評価しなくてはいけなくなります。それもなかなかできないです。
でもちょっと考えてみると、その評価は会社のお金をどこに払うのかということなので、自分の懐を痛めないでやれる事ですし、自分の会社内のみのお金の使用です。まったくケチな話です。
(笠)自分で納得した活動が出来ているか、そして僕らの活動にお金を払う人がいるか、ということは重要ですね。それは今少ないけれども、自分でお金を出して聴きに来てくれる人は本当に貴重ですし、だんだんそういう人も増えてきています。自分では納得したものを出そうと努力していますが、自分の努力だけではできなくて、いろんな事をできる人が集まって、それぞれの力が上手くかみ合ったときにいいものになると思っています。
(小)僕はプリンチピの活動はその辺の問題をだいたいクリアできるような気がしているんですよ。しかし、今のお金で価値を決めているやり方ではダメですね。お金は抽象的なものなので、価値を測る基準に用いられている事はおかしい事とは思いませんが、お金を稼いでいる人=成功している人という考えになっては人生を踏み間違えます。お金で払ってくれれば嬉しいんですが、それ以外の可能性もありますよね。何かいい経済学を誰か考え出してくれないかな。
(笠)ははは。そうであればいいんですが。
(小)笠原さんなんか、お金はあんまり貰えていないけれども、みんなの尊敬が集まっている。今の若い人の間では、あまりお金をかけないで、巧く生活している人が結構います。幸せをお金に求めない。笠原さんもそういうタイプですし、同じタイプの人が集まってきます。
(笠)そうですね。無駄なお金はかけたくない。けれども、いるところには要るんでなかなか難しい。
(小)そうなんですよね。でもこういう価値観を言い続けると案外近いうちになんとかなるかもしれません。楽観的すぎるかもしれませんが。
(笠)ははは(笑)
(小)話は戻りますが、僕は、去年お世話になった人を2人亡くしました。音楽や芸術についていろいろと教わった人です。
(笠)そういうの寂しいんですよね。
(小)そうなんです。でも「これからはお前がやれよ!」と言われているような気がするのです。「僕らは自分らにいろいろと教えた。これからは自分で考えてやれよ。自分の価値判断もな!」と。
(笠)今自分があるのは先人のおかげですが、自分でやる事をもっと肯定していかなければいけません。
(小)その通りです。

公園の遊具の安全性を細かく確認する笠原氏


⚫︎今年は
(小)さて今年ですが、どんな演奏会を考えていますか?ロームシアターの冠公演が5月にありますね。
(笠)5月6日です。ロームシアター京都オープニング期間の冠事業としてプリンチピの公演があります。「京都、聚楽第、幻のキリシタン音楽」です。ちょっと恥ずかしいタイトルですが(笑)
(小)恥ずかしいぐらいがちょうど良いんじゃないでしょうか。古楽は専門的になりすぎる傾向がありますからね。他に何か10周年記念企画はありますか?
(笠)まだ、考えていないんです(笑)
(小)なかなかマイペースな感じでいいんではないですか(笑)変に盛り上げすぎず、でも自分の中では最高に盛り上がっている感じでいきましょうか。今日はどうもありがとうございました。

(笠)ありがとうございました。

2016年1月28日木曜日

ロベルト・バラール

「本読みの遠足」の会場下見のため北新地へ。北新地といえば、「ササヤ書店」があるので、寄らないわけにはいかない。

で、やっぱり買いました。
ロベルト・バラール「リュートタブラチュア曲集 第1巻」。


フランスのFuzeau社から出てるファクシミリ譜。
当時出版されたものをゴミを消して綺麗にしたもの。
もちろん高いけど、出版年が1611年というのがいいですね。モンテヴェルディのヴェスプロ出版年が1610年、カプスベルガーのリュート曲集が1611年。ダウランドのリュート歌曲集第1巻が1613年。
1600年以降、いいものがいっぱい出ていますね。

イタリアとイギリスのはなんとなく知ってるけど、フランスってあんまり知らなかった。同時代ということで、和声感が少し前の1500年代の感じとは変わってきてる。この時期はイタリアの音楽がトップクラスといわれてるけど、他の場所でも同じようなことが起こってたんですね。
でもカプスベルガーと比べると音は少なめできっちりしてる。まあカプスベルガーのはインプロを写し取って仕上げたような感じがするけど。

どちらも10コースリュートの為に書かれている。ルネサンス最後期でありバロックの始めとも見れる作品。
この後、11コース、13コースと、リュートは弦の数を増やしていき、18世紀の盛期バロックでは完全ソロ楽器となっていく。

17世紀の音楽は面白い。

2016年1月12日火曜日

大津古楽講習会終了

大津古楽講習会に行ってきました。
毎年、T内T郎先生が日本に帰ってきた時にやってくれる講習会。
今回も面白い内容でした。

受講生は、
1、小松 6コースリュートでカプスベルガー、ピッチニーニ
2、T本さん アーチリュートでネグリ
3、Y山さん 6コースリュートでダウランド、パーセルを弾き語り
途中、休憩とセッション
4、S田さん ヴィオラ・ダ・ガンバでマラン・マレ
5、T内さん バロックギターでル・コックのフォリア

今回は皆さん、とても上手かった。特にY山さんの弾き語りは言葉もよく聞き取れるし、リュートも上手。厳しいレッスンだったけど先生が期待してるのがわかる。ダウランドのリュート歌曲(マドリガーレ)は、短い中にすごくいろんな事がおこっていて、それを一人でやるのは大変。こんなに芸術レベルの高いものやったんやな。

僕のレッスンは笑あり涙あり(あ、ないか)の楽しいものでした。だいたい褒めてくれるんですが、褒めた後に落とす、といういつものパターンになっている。イジられ芸の僕としては満足です。

T本さんはいろんな楽器をやっているそうで、いつも持ってくる楽器が違う。レッスン前とレッスン後で音が全く変わってる。すごいなー。

S田さんのガンバは僕も通奏低音で参加させてもらった。いい音で弾いていたのに僕が邪魔してごめんなさーい、って感じでしたが、面白いレッスンになったかな。義太夫とかの知識も豊富でお話も面白い。

最後T内さんはもともとリコーダーの名手ですが、バロックギターを始めてどんどん上手くなっている。始めから音楽の素養のある人は上達も速いんですね。ウラヤマシイ!

年始にこんな講習会があると、この1年いい事ありそうな気がするね。

2016年1月8日金曜日

ジョンスコ

明けましておめでとうございます。松の内も明けまして、今更な感じですが。

今年一枚目のCDはジョン・スコフィールドの2015年の新譜「PAST PRESENT」。



学生時代は、禿げた外人を見たら「ジョンスコ歩いてるで!」とギャグにできた時代でした。「マサカリクサオです!」というと誰でも受けた時代ですね。

ジョン・スコフィールド、90年代はファンクをやってたらしい。聴いてないけど。でも、この前、YouTubeで見つけた動画はライブの模様を撮っていて、ギタリストがもう一人いて、そいつがパソコンで音出したりしてる。時代は変わったなー、って感じとともに、ドラマーのすごいこと。ほとんどドラムンベースのドラムを手で叩いてる。その過剰なタイコの音にジョンスコの微妙なリズム感のギターが絡まって、ほんとカッコイイったら!
ジョンスコって、やっぱりファンクの人なんやなあ、と再確認した。

で、このアルバム、なんか地味なんやけど、ジャズの部分が戻ってきてて僕は好きな感じ。ファンクやブルーズの感じを消してしまわずにジャズに持っていけてるときが好きかなあ。この人のリズム感、すごくわかりにくいんやけど、やっぱりリズムの奥にはファンク/ブルーズがあって使う音がジャズ。CDではリズム感はちょっとわかりやすくなってるね。

禿げたおっさんでかっこいいのはジョンスコと吾妻光良ぐらいやな。クレージー剣ももう少し。