2014年2月14日金曜日

東京大学のアルバートアイラー(キーワード編)

菊地成孔というジャズサックス奏者&文筆家がおります。皆さん知ってますかー?
えー、知らない?知らない人が多いと思いますが、超面白いですよ、この人。

ここで紹介してる本(ジャズサックス奏者って言ってるのに本!)とは別に、「憂鬱と官能を教えた学校(上)(下)」「M/D(上)(下)」など、文庫で発売されていますので興味のある方は読んでみてくださいねー。ちなみに「憂鬱と官能」はバークリーメソッドについて、「M/D」はマイルス・デイヴィスについて書かれています。どれも菊地成孔と大谷能生の共著です。

さて、この本「東京大学のアルバート・アイラー」ですが、アルバートアイラーって最近まで知りませんでした。なんとフリージャズのサックス奏者なんですね。でもフリージャズっていっても結構聴きやすいかな。この本は菊地成孔と大谷能生の共著として、東大で行った講義録として出されています。講義には2回に1回はゲストを呼んでお話を聞くという豪華なものです。こんな講義を大学時代に受けたかったよ。いや、東大はムリやろ。。。ですが、モグリの生徒も居たようなので。


内容はというと、
第1章ブルース(ゲスト:飯野友幸)
第2章ダンス(ゲスト:野田努)
第3章即興(ゲスト:大友良英)
第4章カウンター/ポストバークリー(ゲスト:濱瀬元彦)
となっております。

初めの章から超面白いんですが、後になるにしたがって面白さが増していきます。
ブルースの章では、アメリカ黒人社会で唄われていたブルースという音楽を詩の方から読み解きます。またブルースの構造は西洋の音楽理論では説明不可能なのに、間違った様には聴こえないという不思議/問題が提示されます。
ダンスの章では、バロックダンスから90年代以降のクラブミュージックのダンスに至る話がされます。2人で踊るためのステップを中心に構成された音楽(ジャズ)がビパップ以降、ダンスしないで聴く音楽となっていくが、イギリスでジャズの拡大解釈により踊るためのジャス(クラブジャス)が流行る。それ以後ディスコからクラブへとアンダーグラウンドのダンスミュージックが作られ、シカゴハウス・デトロイトテクノへつながっていく。それは黒人のブルース/ファンクを80年代後半、打ち捨てられて安くなっていたドラムマシンやベースマシンを使って表現されたものです。(野田努さんの「ブラックマシンミュージック」という本は必読ですよ!)

ここからがすごいんですが、即興の章では即興をどこの文化にも属さない形で作り上げたというギタリスト・デレクベイリーの事から始まり、音響、音量など音韻の事を離れての「即興」を探っていきます。ちなみにこの回のゲスト、大友良英さんは「あまちゃん」の音楽を作って、最近ちょっと名前が売れましたね。本来の音楽はノイズ系なので、あまり知られていません。以前、京都法然院でレイ・ハラカミとの対バンで演奏(だったのか?)していたのを見た事があります。音を発しているものは楽器ではなかったので、かなり強烈な印象として頭に焼き付いています。

最後の章では、ビバップの希薄な調性、モードに移行していったときにリディアンクロマチックコンセプト(1オクターブの12音、すべて使える)を提唱したジョージラッセル、それらを踏まえつつ、また批判して、独自の理論(ラングメソッド)を作った濱瀬さんの話が最高に面白いです。ブルースのブルーノートって理論では消化できないのになんで不自然に聞こえないんやろう?という疑問を解決しています。

僕もこれを読んで初めて知ったのですが、「下方倍音列」っていう考え方(!)を導入しています。驚くべき事に、バロック時代に考えだされていたみたいで、弦の長さを半分にしたらオクターブ上が鳴るというのを反対に考えて、弦の長さを2倍にしたらオクターブ下が鳴るやろう!という考えだそうです。
倍音って上に出来ていくものと思ってたのに、下の倍音って!!!
当時はオカルト扱い(今でも?)だったそうです。そらそうですよね。でもあくまでも仮定です。でも、ドの音を鳴らすと、下に長3度の♭ラと下に完全5度のファが共鳴するそうです!!!
それをゴニョゴニョやると、「ホラ、ブルーノートも使えます!」ってなるんです。僕も良くわかってないので、その大事なところをすっとばしましたが(笑)、この持って行き方が鮮やかなのです。

また何でもマニュアルを使ってやる事の危うさも言っていて、自分で考えてみろ!と。僕のリュートの先生も同じ事を言ってますね。自分で調べて、自分で考える。結論ももちろん自分で出す。それが出来ないと音楽の説得力は生まれません。音楽の本でこんな面白くて感動するの珍しいですよ。
あ、感動って誤解してもらっては困るけど、現代のベートーベンとかじゃありません念のため。
皆さん買って読んでくださいねー。

菊地成孔さんのCDも面白いですよー。これも買って聴いてくださいねー。


下方倍音列:倍音は普通上に8度、12度(5度)、17度(3度)というように現れるが、下方向にも同じように現れるという考え。ドを基音とすると12度(ファ)、17度(♭ラ)で基音と合わせてマイナーコードが現れる(Fm)。

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