川上弘美作「センセイの鞄」。僕がこんな恋愛小説を読むことはほとんどないのです。なぜ読んだかというと、朗読イベント「物語の、うつわ(三)」でやることになったため。(「物語の、うつわ(三)」は6月12日終了。次回(四)は7月。)
谷六にある、やままちギャラリーで月替りで展示している器(陶器)も同時に観賞できる、面白いイベントです。
「センセイの鞄」は、居酒屋で1人で飲んでいる三十代後半のツキ子さんが高校時代の国語のセンセイと再会するお話。お互い距離をとりながらも惹かれていく。最後は寂しい別れが待っているのだが、深いところでの静かな二人の結びつきを感じさせる。
面白いので読んでみてください。
「センセイの鞄」から抜粋した内容に、ところどころ音楽をつけるのが僕の仕事。
朗読をするのは甲斐さん、徳田さん、それに名俳優の秋月雁さん。みんな上手い人達です。こんなところに僕が出てもいいのか?稽古ではなかなかうまくいかなくてご迷惑をおかけしましたが、まあなんとか本番をむかえられました。
選曲でやりたかったのは、僕しか選ばないような曲を入れることでした。ちょうど調べていた、メルツ作曲の「an Malvina」とソル作曲の「Lecons」を初めと終わりに使いました。あとは、コード進行を決めて、それにそってのインプロ。
本番では、調子が出てくるまで時間がかかる。全然難しくないところでミスをするし、音楽がぎこちない。
中盤あたりでは調子が出てきて好きに弾く。心配していた調弦も狂わない。きっちりやるより、ある程度決めただけの状態の方がリラックスできる。
物語の後半はほとんど弾くところがない。朗読に集中するところ。演者達もいつもより熱が入っている感じだ。泣いているところの台詞が、本当に泣いているように聞こえる。いや、泣いていたのかもしれないな。それを聞いてこちらも影響を受けてしまう。最後の曲はもっと上手く弾くつもりやったけど涙で楽譜が霞んでしまった。
3月の「大人の遠足」に続いての甲斐さん企画。
素敵な人達と共演できた幸せをかみしめております。同時に、自分の音楽レベルをもっと上げなくては、とも思いましたね。
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