2019年5月15日水曜日

「おはなしえん」最終回

足掛け5年(実質4年)続いた「おはなしえん」ですが、とうとう最終回を迎えました。
観に来ていただいた皆様、差し入れなどいろいろと応援してくれた皆様、本当にありがとうございました。
2015年の7月から始まった「おはなしえん」。天王寺動物園に来るのは、僕個人の経験で言えば幼稚園の遠足のとき以来、ほぼ40年ぶりの来園でした。

このイベントの中心となっていたのが朗読「ペンギンは空を目指す」です。このお話が全部で10話ありました。これが終了したので、とりあえずの最終回だったわけです。



「ペンギンは空をめざす」は初回からいい感じで始まりました。子供向けの朗読と言いながら、内容は大人向けだったと思います。また、未来に僕らの考えとそれほど変わらない想いを持つであろう、数少ない子供たちのためのものです。

第1回目、フンボルトペンギンの、でも泳ぎの得意でないテンちゃんの紹介のところで使うオープニングの曲を、オシャレなものにしたい、南国を思わせるゆったりした感じをどこかに持ちつつ、心の中にワクワクする気持ちを持っているもの、と考えていました。
それで、若い時分によく聞いていた大瀧詠一さんの「君は天然色」にしました。80年代に流行った曲ですね。ちょっと難しかったけど出来ました。
でも、YouTubeに出すビデオを作る段階で、人の曲は極力避けましょう、ということになりました。
でも昔の曲だったら大丈夫やろう、1920年代戦前やったら、と思って「Fishin' Blues」を持ってきました。これは1920年代にはテキサスのブルースマン、ヘンリー・トーマスが歌い、1970年代にタジ・マハールが歌ったカントリーブルースです。いい選択だったと思っています。第1話を他でやるときにはこの曲で落ち着いています。

飼われていて緑のネットの中にいるテンちゃんは、サギのハルカと出会います。そこで「自由」というものを教えられて、というか飼われていて自由がないことをバカにされて「ペンギンは飛べるわ!」と言ってしまいます。それで、飛ぶための冒険、通天閣を目指す旅が始まります。テンちゃんはペンギンの部屋をハルカの助けを得て出ていきます。

天王寺動物園を出て行くまで、王様ペンギン、タンチョウ、フラミンゴなどいろんな動物(だいたい鳥)に出会って助けられます。
とうとう動物園を出たテンちゃんは、ネズミの助けを借りて通天閣に登っったけど、さらに高い建物「ハルカス」を見つけます。通天閣を降りたテンちゃんは、同じく空を飛ぶために動物園を出たペンギンたちに出会い、一緒にハルカスを目指します。
もう、人間に捕まってしまうギリギリのところで、ハルカの率いるサギたちの助けで、空を飛びます。飛びながら「もういいわ」と思い、ハルカに動物園まで送ってもらいます。

 ハルカ「テンは飛んだね」
 テン「ハルカも飛んだね」
 ハルカ「僕はいつも飛んでるよ」
 テン「私はたまに飛ぶのよ」
 ハルカ「そうだね」

このシーンがグッときますね。種が違うのにお互いを認め合っていることがよくわかります。人間もこんな風にありたい、と思います。

帰ってから両親に怒られますが、前とは違って、不得意だった泳ぎにでかけます。
テンちゃんはちょっと成長しました。いろんなことを知り、その上で自分のことを、また他人のことを、肯定するようになっています。

最終話の台本をもらったのは1月の終わり頃、初めて読んだときには泣きましたね。一見そんなに泣くところはないようなのですが、わかる人には泣けるのです。

自分のことに置き変えてみて、この心の変化をわかる人はなかなか出会えない貴重な物語です。劇的な驚きにせず、最後がこんなに静かなのっていいですね。

一番最後の曲は第1話と同じと決めていました。「Fishin' Blues」です。
本当に最後の5月12日、バナナンボの相方のあぼちゃんが「最後の曲が早く終わりすぎてない?」っていってくれて、もう1コーラス追加しました。おかげで泣かないようにがまんしなければいけませんでした。あぼちゃん、ありがとう。

「ペンギンは空をめざす」って、なんか自分の物語のような気がしてるのです。「おはなしえん」を一緒にやった劇団超人予備校の人たちの物語のような気もするし、この物語を書いた魔人ハンターミツルギさんのことのようにも思うし、すべての世間的にうまくいっていない人への励ましの物語であったようにも思うのです。




「おはなしえん」に足掛け5年(実質4年)関われたことを、本当に嬉しく思っています。

2019年5月11日土曜日

アルス・スブティリオール

今年の正月から行ってる「アルスノヴァ読譜コース」の講習ですが、もうパートIIIです。まだムジカフィクタが怪しい感じなんですが。

パートIIIだけあって、結構手強いやつも出てきます。
今回の宿題はこれ。

「Inclite flos orti Gebennensis prestantibus roribus immensis」Matheus de Sancto Johanne

3パートあって、それぞれでメンスーラが違います。メンスーラというのは長い音符をどう分割するかの決まりで、現代の楽譜の拍子みたいなもんです。ちょっと違いますがね。
メンスーラがパートによって違うというのは、例えば、カントゥスは4/4拍子、テノールは9/8拍子、コントラテノールは6/8拍子というふうに違うんです。これ聞いただけでめんどくさいでしょ?さらに面倒なことにそれぞれのパートが途中でメンスーラが変更されます。一番音価の短い音符を各パート共通の長さとして、トランスクリプションを作っていきます。
だいたい読みましたが、ずれてます。合わないのかな?ちゃんと同じところで曲が終わってくれません。やっぱり間違ってるのか???

こういうややこしい曲が作曲されたのは、アルスノヴァで記譜がちゃんとできるようになったと思ったら、それをややこしくしてやろう、という連中が現れるんですね。アルス・スブティリオールと呼ばれているものがそれ。14世紀後半から15世紀初め頃に作曲されました。作曲者には、ボード・コルディエ、ジャコブ・ド・サンレーシュ、シュゼ、マッテオ・ダ・ペルージャなどがいる。

マショーが出てきて、100年後ぐらいにデュファイが出てくるまでの間の時代。もう、なんでもありな感じもする。
結構ヤバめな曲もありますよ。「Fumeux fume」という曲(ソラージュ作曲)、邦題「燻った男」は、これらの中でも有名曲らしい(僕は知らなかったけど)。燻った男、要は、”煙を吐く男”は”薬物を吸ってるやつ”っていうことか。アヘンか当麻かわからないけど。
この曲はマンロウの「宮廷の愛」の2枚目に収録されていますよ。
その他の作曲者で僕の手持ちのCDは、この2枚かな。
ロンドン中世アンサンブル「マッテオ・ダ・ペルージャ世俗歌曲集」

 おなじく、ロンドン中世アンサンブル「悪魔の歌」

あと、フィリップ・ピケットのやつを昔持ってたけど、売ってしまった。手放すんじゃなかったな。
興味ある人は聴いてみて!

2019年5月7日火曜日

大津古楽講習会レポート

10連休の最終日、大津で古楽講習会がありました。なんとメンバーは前回と全く一緒。お一人知らない人が来る予定でしたが、体調不良とのことで不参加となり、前回と同じメンバーとなりました。

12時30分頃、集合してちょっとだけラスゲアードの練習。シャコンヌのコード進行でやりました。
そう、今回のテーマは「ラスゲアード」なのです。Taro先生のように華麗なラスゲアードを弾けるようになりたい!
ギター関係者は参加しとかなあきませんね。

レッスン1人目はYamagata夫妻。
ディビジョンフルートから1曲目。4小節の繰り返しやけど、こういう曲は自分の引き出しのなさを痛感してしまう。Yamagataくんのリュートは十分考えられていて面白いところもいっぱいあった。後でTaro先生が弾いてみて「パターンは多くしてないけど、気分は変えてる」とおっしゃってました。なるほどなー、それの方が聴いている方も演奏している方も面白くなるのだ。いいこと聞いた。僕もやってみよう。
そのあと、Yamagataくんのリュートソロでフランチェスコ・ダ・ミラノのファンタジア。こんな難しいのよく弾くなー。久しぶりにYamagataくんのリュートを聴いたけど、やっぱり上手くなってる。

2人目はSakataniさん。
カルヴィのシャコンヌ風の曲を2曲。毎回腕を上げていってるのがわかる。難しくて読みにくいバロックギターの楽譜を本当によく読み込んでる。ラスゲアードが前回よりスムーズにいってる。めっちゃ勉強&練習したんやろな。見習わなくてはいけません。
昨日、フレットをダブルにしたそうで、なかなか苦労されてました。やり直しを通告されてましたね(笑)こうやって出来るようになっていくのですよ。
でもオリジナルギターにダブルフレットとガット弦で、いい感じになっていきますね。
うらやましー。

3人目はTakemotoさん。
最近、いろんな別の講習会でお会います。この人も勉強熱心。受講曲はル・コックのエア。ル・コックはド・ヴィゼの弾き方を丸写ししてるらしいけど、勘違いしたのか別の意味でとったのか、曲中で出てくる装飾音などはド・ヴィゼと反対になってたりするらしい。もう、ややこしいな。
Takemotoさんの演奏は説得力が出てきたように思う。めっちゃ引き込まれます。バロックギターもオリジナル(Sakataniさんの持ってるモデルと同時代らしい)で、いい響きですねー。

ここでラスゲアードの説明と実践コーナー。
ルネサンスギターでのラスゲアード使用の可能性とか、リュートやテオルボで使われた例などを挙げて説明されてました。こういうのを聞きたかったんですよ。ちゃんとエビデンスのある内容なので安心できます。
実践ではトリッロとレピコを弾いてみる。どちらもできるようになってきたけど、あともう少し。

レッスン4人目は岡山からTanimotoさん。
前回からめっちゃよく弾けてる。今回はコルベッタのフォリア。先生によると初期型のフォリアだそうで、楽譜はラスゲアードとプンテアードの混合で書かれているミックスタブラチュアというやつ。めっちゃ見にくいのです。家での準備に膨大な時間を費やしたことが想像できます。先生のアドバイスにいちいちちゃんと答えていく。素晴らしいですね。今回の講習会の中で唯一の若手です。これからめっちゃ上手くなっていくんやろな。楽しみです。

今回は、僕はレッスンなし。賑やかしとしての参加です。
レッスンの途中でボケたり突っ込んだりして場を和ませる役です。ツッコミのキレがイマイチだったかも。反省反省。

でも、おまけで1曲、みんなの前で弾かせてもらいました。ギヨーム・モレイユの「Conte Clare」です。去年からよく弾いてる曲ですね。

そのあとTaro先生の持っているフルートの説明と吹き比べを、ゲストのHasebaさんがやってくれました。ベーム式フルートが出てくる直前の楽器だそうです。ベーム式はもう作られていたけど、音楽院には採用されなかったとか、菅のテーパーのつけ方が昔と今では違うとか、面白い話を聞けました。

打ち上げは膳所駅近くの王将。お腹いっぱい。ごちそうさまでしたー。

2019年5月1日水曜日

大阪中世まつり終了

元号が「令和」に変わりましたね。
これで昭和生まれは3時代生きた老人のような扱いを受けてしまうことでしょう。

平成最後の大阪中世まつり(4/27〜29)に参加してきましたよ。僕は今回が初めて。

大阪中世まつりは、音楽だけでなく、リリパイプという頭巾を作る衣装製作や、モノコルド(楽器かな?)製作、製本、剣を作って戦う、など、いろんなコースがありました。なかなかの充実ぶり。
僕も衣装を着せてもらいました。頭巾のリリパイプとフープラン。どちらも楽師が身につけていたとか。リリパイプはマヂメな頭巾かぶりと、飲みに行くなどのくだけたかぶり方の2つの使い方があったそうです。これは不マヂメな方。

受講したのは音楽のBクラス。デュファイの世俗曲4曲のレッスンと講義が受けられます。

4曲の中で、これだけめっちゃ難しいなあと思っていたのが、「まこと隠れもない貴公子の名を称え(C'est bien raison de devoir essaucier)」です。

1日目はこの曲のレッスンから始まりました。
テノールパートにしようかなー、と思っていたのですが、テノールパートが結構人数多めだったのでコントラテノールにしました。
いきなりカントゥスが不完全音符で始まって、まずそこで合わせられない。ブリス先生がカウントをとってくれると出来る。
2ndパートではテンポがちょっとゆっくりになる。そこも入りにくい。3rdパートはまた元のテンポに戻るのですが、やっぱりそこでも合わせられない。
それが、やっていくうちになんとなく出来るようになってくるのです。なかなか大変でしたが。

それをやった後で、「恋しい人にもしお会いできるのなら(Se ma dame je puis veir)」をやったら難なくできました。おおー、こういうやり方もあったんですね。もう、後が怖くない。

楽器奏者でも歌詞を読まされます。ブリス先生の言う通りに発音しますが、フランス語は発音しにくいなー。

2日目は、「大きな報いを受ける下僕(Le servieur hault guerdonne)」から。
これもちょっと難しいけど、「まこと隠れもない貴公子の名を称え(C'est bien raison de devoir essaucier)」ほどではないですね。まあ、なんとか弾けます。

この楽譜、ハート形で有名ですね。

あと、歌詞が不明で、写本が1つしか残されていない曲「さらばわが人生よ(Adieu, quitte le dameurant de ma vie)」は器楽曲にして演奏。これが短いのに結構難しい。割といけるかなー?と思ってソロの部分を入れてもらったけど、練習で1回しかうまくいきませんでした。ごめんなさい。

3日目は、会場に着いたら、「ちょっとここ入って!」って言われて、「デュファイの音楽 1曲体験レッスン」に強制的に入れられる。テノールとコントラテノールをちょっとずつ弾く。昨日までの4曲に慣れてたらわりと簡単に弾ける。
でも、受講している皆さんはトランスクリプション楽譜に慣れてないだけなのよね。五線譜にC音の位置を指定してあるだけやけど、そのC音の位置が一番下の線か、真ん中の線についてる。僕も慣れるのに苦労したよ。

そのあと、1時間のレッスンというかリハーサルを行って発表会。
まあ、個人的には全然うまくいかなかったけど、みんなで一緒に弾くところはだいたいいけたかな。

10連休の前半、たっぷりと中世音楽に浸れることができました。幸せだー。