2019年7月19日金曜日

ブルクハルトとル・ゴフ

中世ブームが去年(いやいやもっと前かな)から来てるんやけども、ルネサンスにも同じように興味があるのです。

だいぶん前に買っていた本、ブルクハルトの「イタリア・ルネサンスの文化」(ちくま書房)の文庫版が出版されましたねえ。持ってるので買うかどうしようか迷いましたけど、買いました。持ってても重すぎて電車では読めず、家で読もうとしても眠さに負けて読んでなかったのですよ。文庫はいいですねー。
始めの章は中世からルネサンスにかけてのイタリアの政治状況を書いたもの。
15世紀末から16世紀始めのあたりに、教皇アレクサンドリア6世と、息子のチェーザレ・ボルジアのことが書いてあった。これが僕の知ってる(というか始めに読んだ)塩野七生の「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」と反対の書き方なので非常に面白く読んだ。

ブルクハルトは、アレクサンデル6世と息子のチェーザレの行った、教皇領を力で制圧することには否定的。塩野は一般的にそういう評価だということを知りつつ、両者を悪者としては書いていない。むしろ、チェーザレは一般市民にも歓迎されるように振る舞ったことを書いている。

ブルクハルトは、政治家というか統治者を結構悪く書いている。僕らが漠然と思ってたことはこういう学者たちの見識の影響が大きいのかな。そういう前提があるから塩野七生の書いていることが面白く思えるのですね。

あと、上巻では「機知」について書いたところがある。イタリアのルネサンス人は何か素晴らしいものを見せられた時や聞かされた時に、いかに素早く嫌味を言えるかが、その人の頭の良さを誇ることになるって。特にフィレンツェはそんな奴が多かったらしい。
それから、人文主義者のこと。大変もてはやされたけど、だんだんと人々の不興をかうようになり、没落していったとか。

下巻は「祝祭」のこととか、イタリア人の「悪」についてとか、宗教をどう思っていたかとか、とにかく面白い内容です。
魔法とか魔女とか降霊術、占星術など、どれも取るに足りない内容といいながら、結構なページ数が割かれている。気に入っているみたいやな。

音楽のことに触れているところもあったけど、それはイマイチな感じやったかな。訳のせいかもしれないけど、「弦楽四重奏」って聞いて、ヴィオールのコンソートを思い浮かべないでしょう。そんな感じ。

でも、そのブルクハルトを批判している人物がいます。フランスの歴史学者、ジャック・ル・ゴフです。著書の「中世とは何か」の中で、ルネサンスと中世のあいだに時代区分を定着させた人物がブルクハルトである、と言っています。

ル・ゴフの考え方は中世は15、16世紀ぐらいまで続くとみていて、その中に複数のルネサンス(古代回帰運動)があったとしています。カロリングルネサンス、12世紀ルネサンス、そして一番新しいのがイタリアで興ったルネサンスということ。
これはあんまり僕らにはピンとこないけど、こっちの考え方の方が自然やなという気もする。ルネサンスがおこっていたのは一部の地域で他のところはなかったり、遅れてきたりもする。歴史に境界線は引けませんね。

音楽のことを考えるとなるほどと納得しますね。中世とルネサンスってそんなに変わった感じがしない。中世の延長線上にルネサンスがある、って思うと自然に感じます。ルネサンス終わり頃から和声感のある音楽が主流になってきて、バロックにつながっていく。

ル・ゴフ、もうちょっといろいろ読んでみたい。

0 件のコメント:

コメントを投稿