2018年9月28日金曜日

ダンスリー2つ

16世紀の楽譜は、リュートやギターのタブ譜になっているもの以外は小節線がない。
この前の古楽講習会でご一緒した方が、アテニャンのダンスリーの中のバスダンスを3拍子で現代譜に起こしたら踊るのに小節数がぴったりになったと話していた。

その元の譜面がこれ。





上からソプラノ、アルト、テナー、バスの順です。小節線がないでしょう?
この曲、普通に見ると、2拍子で考えますね。スコアにしてみました。

2分音符2つ分を1小節にして綺麗におさまりました。
でも、曲の頭の休符(現本の楽譜ではミニマ1つ分の休符)を無視して、最後にそれを付け加えると、3拍子として綺麗におさまります。というか、3拍子っぽい動きをするところが、現代譜の最後の段の初めの3小節にありますね。

これは2拍子なのでしょうか、それとも3拍子なのでしょうか?

これと同時ぐらいに別件を見つけました。
スザートのダンスリーが1551年に出版されています。それの現代譜が家にありました。日本ショット版です。
その中の曲で有名なバスダンスがこれです。


よく古楽のダンス系のCDに入っていますね。
これはバスダンスですが、2拍子で書かれているように見えます。しかし1小節目の拍子記号は「Cに縦線」なので、今の楽譜では2拍子、でもそのすぐ右に「3」と書いてあります。

これはこの曲集の初めに校訂者による注意書きがあって、
『(打楽器の)打数は奇数拍子では「♩♪♪♪♪」、偶数拍子では「♩♪♪♩♪♪」と決まっていた。例外として、緩やかなバス・ダンスおよび後に続くより速いナーハタンツ(Tourdion, Reprise)は、偶数拍子で書かれているにもかかわらず、3拍子で踊られ打たれた。』
『この版では原典音符の変更はしていない。』
とある。

これを見る限りでは、スザートの原典では「Cに縦線」の記号が書いてあったと考えられるが、「3」と書いていたかどうかは不明。でも3拍子で弾かせようとしている。いや、リコーダーは2拍子でリズム隊は3拍子???そんなことないよな。

それで今、原典(Het derde musyck boexken/Tielman Susato 1551)を探しています。ネットでも見つかりませんし、楽譜屋にも「絶版です」と言われました。
誰か、ネットでダウンロードできる場所を知っていたり、持っていたりしたら、教えてください。

2018年9月22日土曜日

アテにゃん(講習会その後)

キューバ音楽にうつつを抜かして、まだ夏休み気分やろう?と思われているかもしれないですが、そんなことありませんよ。しっかり古楽はやってます。

8月に古楽講習会にいったのだけれど、その時に話題になった「バスダンスは3拍子か2拍子か?」という問題がまだ、facebookのメッセンジャー上で続いてる。
疑問を出したのは僕なのですが、その時にレッスンしてもらった曲でル・ロワの「バスダンス」は2拍子で書いてあったのです。でも一般的には「バスダンスは3拍子」なのです。

そのあと、アテニャン出版のリュート曲集(Dixhuit basses dances 1529/30)に2拍子のものを見つけました。

その時の疑問点は、
1、バスダンスとトルディオンの間に何か曲があるけどこれは何? 
2、バスダンスは2拍子もある?
でした。

それでメッセンジャー上で「こんなのあるよ」って出すと、T先生の提案で「とりあえず、音楽辞典(NEW GROVE)を調べよう」となりました。音楽辞典って大したこと書いてないよなーって思ってたのですが。
「Bass dance」の項目のコピーを見せてもらい、それは英語でしたが3ページほどあって、そこには答えが書かれてありました。

1、バスダンスは次第にbasse danse communeと呼ばれるものになって行き、その後にアルボーの言う「retour」が付け加えられるようになった。それは楽譜(アテニャンのDixhuit basses dance )では「recoupe」となっている。フランスでは、よく「Tourdion」が追加される。
2、basse danse communeは6拍子から4拍子に変わっていった。

なんと疑問点が解決しただけでなく、そこには、僕がこの半年で人に聞いたり本を読んだりして調べたことが大体書かれてありました。

先生曰く「僕らが疑問に思った事は先人も思ってるはずなので大体解決している」とのことです。一方、日本語の文献には信頼できるものはほとんどないらしい。
でも、疑問点が出てきた時の調べ方がわかった。はじめはNEW GROVEで調べて、詳しくはそこに載っている参考文献を読めばいいんですよね。こんな簡単なことがなぜわからなかったのか?ってわかった時は思うけど、凡人にはわからないものなんですよねえ。

ヨーロッパで普通に仕事をしている先生は、こういうことは大体知っているだろう。でも、すぐに答えを言わずにそれを自分たちで調べる方向に持って行ってくれる。
習うってことはすべて一から教えてもらうことではない。どうやったら自分でできるようになるか、を教えてくれる先生は本当にありがたい。それに僕みたいな勘の悪い生徒でも気長に付き合ってくれる。

で、先生に紹介されて、買った本。
「Pierre Attaingnant Royal Printer of Music」Daniel Heartz著
アテニャン研究本です。アテにゃんっていう名前ですが16世紀のゆるキャラではありません。出版社&リューティストです。
ちょっとごつい本が来たぞ。読めるのかな。
がんばれ、僕!



2018年9月19日水曜日

キューバ音楽(その4)

キューバ音楽、とどまることを知らないぐらいのブーム。もう涼しくなってきたっていうのに。もちろん僕の中でですよ。
相変わらずCDを買っている。

ミゲリート・バルデース「アフロ・キューバンの魔術師」
これは日本編集盤。故・中村とうよう氏の解説付きです。
ミゲリート・バルデースの1940年代の録音を中心に構成されている。1曲が短いのもあるけど26曲入ってる。70分越えです。お得感すごい。
いきなり1曲目が超有名な「南京豆売り(El Manicero)」。有名なのは知ってたけど実際の音を聴いたことがなかった。こういうのを耳年増っていうんかな。いい感じに始まります。
2曲目は「Bruca Manigua」。これはブエナ・ビスタのイブライム・フェレールのソロアルバムで歌われているので知っていた。アルセニオ・ロドリゲスが作った曲。奴隷として雇われていて仕事がしんどすぎて逃げる歌なんだけど、なんかのんびりとした曲調です。
他は知らない曲ばかりですが、キューバ音楽が一番盛んだった時期の録音なので、どれもいいです。これは買って正解やったな。

それと、たぶん買わないやろなーと思ってたけど、中古盤屋で950円の値段で売ってたので、思わず買ってしまったやつ。何も考えずにレジにそれを持って行ってた。目で情報をキャッチして、脳を介さずに手と足が動いてたってことか(笑)

それが、ルベーン・ゴンザレス「Introducing」
これはブエナ・ビスタ関連の録音で、そのとき再注目されたピアニスト、ルベーン・ゴンザレスをメインとした編成。
このCDの紹介文で「いいけど、ちょっと退屈」って感じに書かれてたんですが、メインボーカルがいないというだけで音楽的にはすごく面白い。やっぱりメインボーカルが数人いた「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」に比べたら、華やかさでは劣るのかもしれないけど、ルベーンのピアノはボーカルと同じぐらいの重要度で捉えられていたので、説得力では全然負けていない。「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」中のインスト曲でもルベーンはソリストとして扱われている。
キューバ音楽全盛期から、あらゆるバンドでプレイしただけあってなんでもできる。アルセニオのバンドに雇われた時のエピソードをブエナ・ビスタの映画でも語ってたな。
ラテンだけでなくクラシカルで詩的なフレーズも弾ける、化け物ピアニストなのかもしれない。

キューバ音楽はヨーロッパの音楽の影響をすごく感じる。リズムはアフリカテイストなんやけども。
まだ聴きたいやつがいっぱいあるな。

2018年9月6日木曜日

キューバ音楽(その3)

台風、凄かったですね。自然をなめてはいけません。
台風が去ったとはいえ、まだ日中は暑いですね。まだまだキューバ音楽聴ける。

「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」の録音はもともと、西アフリカとキューバのミュージシャンのセッションアルバムとして構想されていたそうだ。でも西アフリカ組がパスポート無くしたってことで来られなくなって、急遽、キューバの引退しているミュージシャンを呼んで、1週間ぐらいで録音したって。

それと同時進行でアフロ・キューバン・オールスターズの「これがキューバ音楽だ!」というアルバムも録っていて、それも「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」と同時ぐらいに発売されている。
これが「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」関連の録音で、一番キューバっぽいアルバムといわれているが、ホアン・デ・マルコスが中心となって作られている。ちょっときっちりしすぎてる感じもするかな。上手いミュージシャンがきっちり録音した、ライブ盤ではないよ、というスタジオ録音の綺麗さ。

あと、ブエナ・ビスタ系列の録音でオマーラ・ポルトゥオンドも買った。
これはストリングスの入ったアレンジになっていて、ムード歌謡感がすごい。
でも、日本の場末のスナック感ではない、オシャレな感じをどこかに漂わせてる。涼しげなストリングスと、ブラスセクションの奇妙で熱いフレーズが対照的ですが、なかなかいい感じです。「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」でも録音されていた「20年」の別アレンジも収録。夜に聴きたい。

それと、ブエナ・ビスタ関連の録音ではないけど、コンパイ・セグンドの「人生の花」。
いきなりカオリーニョ藤原の曲か?と思わせるタイトルです。
コンパイ・セグンドはずっとキューバ音楽界で活躍していた人だったけど、だんだん表舞台から遠ざかって葉巻を作ったりしてたらしい。ブエナ・ビスタのプロジェクトで急遽呼ばれて、キューバ音楽の生き字引的に中心人物の一人になる。90歳を超えてからワールドツアーに行くような世界的な売れっ子歌手&ギター奏者になった。
映画(ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ アディオス)でも言ってたね。
「人生の花は誰にでも必ず訪れる。つぼみがついたのを見逃すな。」
もう涙が出てくるよ。

で、このCD、大当たりでした。
僕の好みの感じ。ちょっとジャズっぽくクラリネットの音が入っていて、でもラテン音楽の良さが前面に出てる。オーケストラのゴージャスな感じではなくて小編成の小粋なもの。
しばらく聴き込んでみたい。

2018年9月1日土曜日

キューバ音楽(その2)

おー。やっと9月だ。9月になった途端、雷と大雨で涼しい。今までの鬱陶しい暑さを洗い流してくれるようだ。

ところでキューバ音楽(その2)です。
ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブはキューバ音楽を世界的に広めた。キューバの音楽ってラテンアメリカの音楽の1つの軸になってるよね。

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブの最初のCDのリリースから20年ぐらい経ってるけど、またCDを買いだした。実は、前回のリリースから10年経ったぐらい(2008年)に再発されてたのと、当時の未発表録音が出てたのだ。

それが、「BUENA VISTA SOCIAL CLUB AT CARNWGIE HALL」と、
「Lost and Found」。

BUENA VISTA SOCIAL CLUB AT CARNWGIE HALLは、世界中の人気者になりつつあった彼らがアメリカのカーネギーホールでライブしたときの録音。当時、アメリカと国交断絶していたキューバ人がアメリカのカーネギーホールでコンサートするってすごいことですよ。よく実現したと思う。演奏は抜群のノリです。スタジオ盤もいいけどライブ盤は高揚感が違う。ほんま1曲1曲が良くて涙出てくる。

「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」のジャケットはイブライムがスタジオに入る直前を撮ったらしい。そのイブライムをニューヨークの街中にコラージュしたジャケットになっていて、それも面白い。

Lost and Foundは未発表曲集。「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」だけでなく、中心的な歌手/楽器奏者のソロアルバムに入らなかった曲をセレクト。なんで初めのCDに入らんかったんかな、っていうぐらいいい曲、いい録音が多い。まあ、初めにこれだけのものがあったっていう豊かな感じかな。後でこんなん出してくれたら、まあ満足ですね。

昔に買った「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」も聴き返してる。
当時好きだったイブライム・フェレールがメインボーカルの曲以外にもいいのがいっぱいあることに、今更ながら気づく。

1曲だけしか入っていないオマーラ・ポルトゥオンドがメインボーカルの「20年」もいい。引退してたけど急に呼ばれた歌手ばかりの中でオマーラは一人だけ、ずっと売れ続けていた歌手。

ブエナ・ビスタでは中心人物のコンパイ・セグンドは、なぜか「Chan Chan」以外の曲は地味な感じでよく聴いていなかったが、「誇りをもって」や「君は私に何をした?」もいい。再発見は嬉しいね。

イブライムのソロも持ってたけど売ってしまった。売らなければよかったな。

18年経ってなお、当分続きそうなキューバ音楽ブームです。